僕の村は戦場だった / アンドレイ・タルコフスキー監督の長編第1作

僕の村は戦場だった [DVD]1962年、旧ソ連映画。『僕の村は戦場だった』は残酷なストーリーと非常に美しい映像の映画。余りに美しすぎる映像なので、反戦映画としての主張がナイフのように胸に突き刺さる。同情の立ち入る隙を与えない緊迫感。この緊迫感に没入できなければ、この映画を楽しめない。

タイトルの『僕の村は戦場だった』はセンチメンタルな同情を誘う意図が見えて、間違っていると思う。原題の『イワンの子供時代』の方がいい。ウラジーミル・ボゴモーロフの原作小説の題名『イワン』の方がもっといい。

第二次世界大戦下、ドイツ軍と戦闘を続けている最前線のソ連軍基地で、12歳の少年イワンは斥侯兵だ。両親と妹をドイツ兵に殺されて、異常なまでの憎しみをドイツ兵に抱いている。だから、命がけの斥侯に自ら志願している。

戦争の最前線の緊迫感が背景の美しい自然をなめるように展開される。ぼくは、この映画が封切られた17歳のときに見ている。どうやら理解できなかったようだ。あるいは、この緊迫感に尻込みをして、映画を解釈しようとして鑑賞していただけだったのだろう。

20代から30代にかけても、同じタルコフスキー監督の『惑星ソラリス』や『ノスタルジア』などと共にこの『僕の村は戦場だった』を見ている。しかし、難解な『ノスタルジア』ともども、映画を楽しめなかった。つまり、作品に没入できなかった。

今は、なぜ『僕の村は戦場だった』を楽しめるのだろう? 世界中で残酷な出来事が尽きないばかりか、国内も、安全が内部から崩れようとしている。こんな緊迫感が、すこしはタルコフスキーに近づけているのかもしれない。

・・・それにしても、妹と浜辺を走るラストシーンの美しいことといったらないが、その前のシーン、ドイツ軍が敵兵の死刑を行っていた棟の大掛かりな設備の残酷な美しさが記憶から消えそうにない。

投稿日:
カテゴリー: Movie