ペニー・フロム・ヘブン / ジェニファー・L・ホルム著の児童文学

ペニー・フロム・ヘブン表紙の絵がすごくいい。青い空、緑の芝生、女の子が野球のグラブをはめている。いかにもアメリカってな感じ。1953年、ニューヨークの南隣のニュージャージー州。女の子は11才のペニー。いとこで仲良しの男の子フランキーと一緒に野球をやっている。ショートを守るが、フランキーに言わせるとペニーの右肩はそこらの男の子に負けないって。でも、ほかの女の子たちは野球に関して言うなら、プレイする側から応援する方に変わっている。そんな年頃らしい。

大リーグはブルックリン・ドジャースの大ファン。周りはニューヨーク・ヤンキースを応援する土地柄だけど、大好きなドミニクおじさんとドジャースを応援している。ドジャースがロサンゼルスに移ったのは1957年のことでこの頃はブルックリンに球場があった。ペニーは球場での野球観戦を夢見ているが、母さんがニューヨークに行くことを許してくれない。ラジオの野球中継をドミニクおじさんと聞いている。

ドミニクおじさんは父さんの弟で、ペニーの父さんは亡くなっている。ペニーの家族は、事務員をしている母さんと母さんの両親、ペニーのじーじーとばーばーの4人暮らし。料理はばーばーが作るけど、これが最悪。この料理をめぐっては何度も笑わせる。それともう高齢でおもらしをするイヌのスカーレット・オハラがいる。もちろんあの映画「風と共に去りぬ」からの名前。

ペニー家では静かに食事をするが、イタリア系アメリカ人である父方の親戚の食事に招かれるのがペニーは大好き。大勢の親戚が集まる日曜の食事はお昼過ぎからはじまって夕方まで続く。次々に出てくるおいしいイタリア料理、オペラのレコード。そして楽器を持って歌い出すという風なとっても賑やかな場でペニーは姫と呼ばれて、みんなから愛されている。母さんは父さんの親戚から距離を置いているのでその食事を共にすることはない。

こんなペニーを中心としたストーリーが、おもしろおかしく綴られる。ストレスで固くなったアタマをほぐしてくれる最高の小説だなーって読んでいた。で、この小説を読もうと思ったら、ここもこれ以上読まない方がいいかもしれない。この小説を紹介するほかのブログも読まない方がいいかも。なにも知らないで読んだ方が絶対におもしろいと思う。

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と、言う事で進めるけど、ネタバレって言葉はあまり好きでないけど、劇的な展開のある小説ではやっぱり配慮して、書かないようにしている。特に児童文学の場合にはこのケースが多い。本書の場合、劇的な事故や過去の真相、良い事も悪い事も、淡々としたストーリーの中で前触れもなく突然にやってくる。その書き方が絶妙でほんとうまいと思う。

知っている人だけど、小説は最初にちょっこと読み、それから結末を読んでから、おちついて読み進めることをやっている。これじゃー、劇的事件に遭遇するワクワク感が味わえないと思うけど、ま、人それぞれだよね。

ペニーは大きな事故に遭い、克服して成長する。そー、最後はハッピーエンド。ハッピーエンドのきっかけも、ささいなエピソード。それは小説の始まりから用意されている。うまいよ、ホント。第二次世界大戦が終わって、まだ8年。ペニーはぼくより4才年上。ぼくの周りでも同じように戦争の話がさかんだったんだ。あの爆弾をイタリアにも落とせばよかったんだ・・・、なーんてどっきりするような会話もある。イタリア系アメリカ人の合衆国における微妙な立場も勉強になった。いや、それ以上に11才や12才で親と真剣な会話をすることに感心した。ぼくにはそんな記憶はない。

ジェニファー・L・ホルム 著
もりうちすみこ 訳
ほるぷ出版、2008年7月発行

Penny From Heaven
(c) 2006 by Jennifer L. Holm

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カテゴリー: 読書