ロシア・アヴァンギャルド / 亀山郁夫著

ロシア・アヴァンギャルド (岩波新書)「青春のロシア・アヴァンギャルド」展を1ヶ月前に見に行ったが、その影響で本書を読んだ。今は、本書を読んでから展覧会に行くべきだったと後悔している。ロシア・アヴァンギャルドへの入門書としては少し難しかったが素晴らし内容だと思う。ロシア・アヴァンギャルド運動の軌跡をたどりつつ、時代背景と作家たちの内面の軌跡にも触れている。このことが本書に対して難しい印象を持つことになっているが、繰り返し読みたい衝動も持った。

ロシア・アヴァンギャルド運動はロシア革命と共に歩み,そして、スターリンの政策による社会主義リアリズムの台頭で終焉する。本書の主な内容は1917年のロシア革命からはじまり、すべての芸術団体の解散が命じられた1932年までの15年間となっている。しかし、事実上の終焉は1930年の詩人マヤコフスキーのピストル自殺(暗殺説もあり)であるという。

本書にはこのマヤコフスキーを始めとして非常に多くの芸術家が紹介されている。中でも、美術家のマレーヴィッチとフィローノフの記述が多い。ぼくは2004年に見に行った「幻のロシア絵本1920-30年代展」の印象が強く残っている。絵本のアヴァンギャルドな作風が社会主義リアリズムに変わることを悲劇としてとらえた展覧会だった。本書を読んで、悲劇は芸術運動に留まらず、芸術家個々人も被っていたことを知った。

ずっと以前から、ロシア・アヴァンギャルドを始め同時代のダダ運動などの作風に強く惹かれている。ロシア革命の激しい時代に若い芸術家たちは、それまでの象徴主義芸術に対する激烈な批判を展開し、アヴァンギャルド運動が高揚している。そんなことを本書から知って、なるほどと思った。

岩波書店(岩波新書450)、1996年6月発行

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カテゴリー: Art