ヒトラーのはじめたゲーム / アンドレア・ウォーレン著のヤングアダルト小説

ヒトラーのはじめたゲーム第二次大戦下、ポーランドの裕福で両親の愛にあふれた幸せな家庭の少年の物語。1939年の第二次世界大戦の契機となった、ドイツ軍のポーランド侵攻とともに少年の幸福な生活は終わる。それまでは、ユダヤ人であることを意識しないで生活をしてきた少年だったが、ユダヤ人であるためにナチスの強制収容所に送られ、過酷な体験をすることとなる。

この過酷で悲惨な体験がドキュメンタリータッチで書かれている。だから小説の深みは少し希薄かもしれない。例えば、同じ少年を主人公とした戦争小説では、マイケル・モーパーゴの『兵士ピースフル』やゲイリー・ポールセンの『少年は戦場へ旅立った』の方が小説としての感動は大きいかもしれない。

しかし、本書ではポーランドに住むユダヤ人の受けた差別とか、強制収容所の様子がよく分かる。著者のアンドレア・ウォーレンはアメリカの女性ノンフェクション作家と紹介されている。2001年に書かれた新しい本だ。欧米では過去の歴史を若い世代に伝えようとして繰り返し、戦争当時の物語が登場してくる。本書もそうした著作のひとつだと読んでいたが、著者のあとがきを読むと少し認識が変わった。

「(ホロコーストに)もしも耳をかたむけないなら、待っているのは次の犠牲者です。ナチスが行ったような「民族浄化」のつぎのターゲットになるのは、いったいだれでしょう?」
と著者あとがきにある。たんに過去の歴史を知ってもらうだけでなく、不安にならざるを得ない現代の状況に、突き動かされるように書いている著者の熱意が伝わってくる。

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カテゴリー: 読書