ルーシー・M・ボストン作、亀井俊介訳の『グリーン・ノウの子どもたち』に改訂新版が出た。前の版は1972年に刊行とある。その版のグリーン・ノウ・シリーズを大方持っていあが、今はこの最初の「子どもたち」だけを置いていた。今度の版はたいへん美しい装丁だ。内容にとても合っていると思う。
少年トーリーが一人で汽車に乗り、イギリスの田舎の母方のひいおばあさんを訪ねるところから始まるが、何度読んでもわくわくする。目的地は洪水で、タクシーも先へは進めなくなる。そこへ迎えのボートがやってくる。トーリーはボートの舳先でランタンを持ち、初めて訪れる屋敷、グリーン・ノウに到着する。
グリーン・ノウに一人で住むひいおばあさんと楽しく過ごすのだが、実はこの屋敷には3人の子どもたちがいる。ペストの流行した300年前に死んだ3人の兄妹が今でも歳をとらずに住んでいる。トーリーは彼らの気配を感じるが用心深くて姿をみせない。トーリーにいたずらを繰り返すが、ついに彼らの姿を見るところは感動する。
3人の子どもたちだけでなく、小鳥や動物も登場してにぎやかにストーリーが進行する。1954年に書かれた児童文学。再読だったが、けっこうピュアに物語の世界に浸ってしまった。
評論社、2008年5月発行