北極圏はロシアの東のはずれの半島での話。父親との狩りの帰り、少女のピバルクを載せたソリを引く犬たちが異様な音に気づく。犬を操る父親は彼らに行き先をまかせると、数千頭のシロイルカが氷にかこまれて身動きがとれないでいる現場を発見する。このままでは、まわりから氷が迫って、イルカたちは息継ぎができないで溺れ死んでしまうに違いない。
白イルカの危機的な状況をすぐに村に知らせて、村人総出で、氷を割る作業を開始するが、何日間たってもらちがあかない。漁師村に砕氷船の援助を依頼することになる。この危機的状況のもとでのピバルクとイルカの友情が芽生える。表紙の絵は、だんだんと弱っていくイルカたちに少女が歌を聞かせているところ。
1984年に実際におきた出来事をもとにした絵本。なかなか感動的なストーリーとなっている。絵は素朴なタッチ。本書を読むと、同じ北極圏での実話に基づいた得本『氷の海とアザラシのランプ カールーク号北極探検記』を思い出す。
ピパルクとイルカたち
文・絵 ジョン・ヒンメルマン
訳 はねだ せつこ
発行 岩崎書店、2003年5月