とどまることなく――奴隷解放につくした黒人女性ソジャーナ・トゥルース

先日『ローザ』という絵本を読んでたら、昔読んだことのある『とどまることなく』が読みたくなった。『ローザ』はアメリカの人種差別反対の公民権運動のきっかけになった1955年のアラバマ州でのバスボイコット事件を描いた絵本。『とどまることなく』はもっと古い話しで、リンカーン大統領時代のまだ黒人の奴隷制があったときの話し。ソジャーナ・トゥルースは幼いときから奴隷として、何度も売られて何人もの主人のもとで働く。最後に自由を得たのち、奴隷解放を訴えて各地を歩き続けた黒人女性。

このようにストーリーは2冊とも啓蒙書なんだけど、絵が素晴らしい。啓蒙書だからといって、教え調の生真面目な絵でないところがすごくいい。画家もこんな内容だからパワー全開でテンションを上げて描くんだと想像できる。

こうした絵本に接すると、アメリカって、過去の暗い歴史的事実を風化させない努力を永々と続けているんだと思う。人種差別や性差別など、昔に比べれば随分と改善されてはいるけど、無くなっているわけではない。あまり差別問題を口にすると嫌われそうな雰囲気があるので、口には出さないようにしているけど、ぼくの好きな音楽は差別問題への意識無しには考えられないと思っている。

それらはジャズやロック、ヒップホップ、レゲエなどだ。クラブジャズだ、エレクトロニカやテクノだと、いくらスタイリッシュなサウンドを作ったって、その根底にある音楽的エッセンスはアフリカから南北アメリカ大陸へ奴隷として連れて来られたアフリカ人の音楽にある。だから、差別撤廃の社会活動に参加しなければならない、という話しではない。差別を直視することで、アイデンティティが育まれることが大切なことだと思う。それによって、誰とも違うその人特有のサウンドが生まれるはずだ。

3日前に聞いた DJ MIEKO もエッセイでヨーロッパでの体験を通じてフェミニストについて書いている。1ヵ月前のヒップホップのパーティでのラッパー AKE-B もHiphopが自分の人生にプラスに作用したことをMCしていた。彼女らのサウンドから強固なアイデンティティがガンガンと響いてくるようだった。こればかりは音楽理論やレッスンから得ることはできない。そんなサウンドがぼくはとても好きだ。

なお、『とどまることなく』の絵を描いているグレゴリー・クリスティーは『Yesterday I Had the BLUES』という絵本もあって、こちらも『とどまることなく』同様、躍動感があって鮮やかな色使いがすばらしい絵だ。

とどまることなく――奴隷解放につくした黒人女性ソジャーナ・トゥルース
文 アン・ロックウェル
絵 グレゴリー・クリスティー
訳 もりうちすみこ
発行 国土社、2002年4月

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カテゴリー: 絵本