ぼくはウィリアム・スタイグの絵本が大好きだ。どれもこれもバカバカしいストーリーだ。そんな絵本を書き続けた人はちょっといないと思う。本書はそのスタイグの自伝的な絵本。1916年、スタイグが8歳の時の物語だ。ニューヨークのブロンクスで木登りをしている少年の写真が載っている。かなり可愛い少年だ。
さて、ストーリーは実にほのぼのとしている。当時の情景を描いている。それらの情景はたぶん、スタイグのこころの中にいつもあったものに違いない。家族や自分自身を描くからといって、特別な気構えは見られない。少々荒っぽい筆使いだ。それが生きている。人は、昨日の食事の内容は思い出せなくても、子どもの頃の数々のシーンを鮮明な天然色でこころにしまっているものだ。それが、確かめられているような絵本だ。ウィリアム・スタイグ、2003年10月没。
みんなぼうしをかぶっていた
作 ウィリアム・スタイグ
訳 木坂涼
発行 セーラー出版(2004年10月)
When Everybody Wore A Aat
by William Steig
Copyright (c) 2003 by William Steig