さて、大阪中央区南本町の「jaz’ room nu things」での阿木譲氏によるDJイング「Hard Swing Bop 3」は50年代ウエスト・コースト・ジャズと現代のヨーロッパ・ジャズを融合してスタイリッシュな空間を生み出すことだった。それはとても心地良い空間で、意図は成功だったに違いない。定期的に続いている阿木氏のDJだが、これまでのようにブルーノート盤によるハード・バップのように、ウエスト・コーストのみでエディトリアルしていたなら、単なるレコード・コンサートになっていたかもしれない。
そうしなかったところに阿木氏のセンスが光っている。実際に氏は始める前に、ハード・バップで押し切る方がよほど楽だ。ウエスト・コーストの選曲は難しい。その上、駄作も多いから・・・と語っていた。つまり、大量のアルバムに耳をすませた結果がこの夜のDJに凝縮しているわけだ。残念なことに今夜のオーディエンスはこれまでの「Hard Swing Bop」に比べて少なかった。ハード・バップのDJを聞いてきて、この夜を外しているファンは、もったいないことをしたと思う。
Howard McGhee / Maggie’s Back in Town!!
The Arrival of Victor Feldman
Pepper Adams / Critics’ Choice
Bob Brookmeyer
The Hard Swing (Jazz Messengers, Elmo Hope Quintet, Chet Baker Quintet, Jack Sheldon Quintet)
Something Else ! / Ornette Coleman
Quartet / Russ Freeman, Chet Baker
などのウエスト・コーストに
Jukka Eskola
The Five Corners Quintet
などの Nu Jazz をからめて、最後は Koop で締めた。
DJによって空間が創られた! そう、とてもいい時間を過ごせた。そして、今までは全くと言っていいほど無視してきたウエスト・コースト・ジャズだが、認識を改める機会にもなった。しかし、ぼくはもうしばらくは、ニューヨークを中心とした50年代から60年代のジャズを聞き続けることも予感した。ブラックの情念を抑制して生まれるストイックなサウンド、すなわちニューヨークのハード・バップがぼくには合っていると思うんだ。ウエスト・コーストを聞くのはもう少し歳をとってから・・・。