溝口健二監督/雪夫人絵図

深夜、NHK衛星放送で「雪夫人絵図」を見た。戦後5年後の1950年作品。戦争が語られることはないが、いやでも戦後の物語であることを意識させられる。主人公は旧華族の家に生まれ育った雪、彼女の没落が描かれる。戦後の変革の中での没落を雪夫人の精神と肉体の相克を通して描いている。戦後の大衆社会がこの映画と原作である船橋聖一の同名小説に快感をおぼえたとしたら、しかたがないとはいえ残酷な時代だったんだと思ってしまった。本作品は今回が初めての鑑賞だが、ぼくの中では、溝口は芸術映画の巨匠から大衆映画の巨匠とへと認識が変わっていくようだ。

主人公の雪は小暮実千代だが、ぼくがこの時代の女優で好きなのは久我美子。ここでは重要な役の若い女中を演じていた。若々しくてとても良かった。

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カテゴリー: Movie