橋爪紳也監修/都市再生フィールドノート 大阪のひきだし

大阪と名付けられているが、本書は船場地域とその周辺の都市再生フィールドノートとなっている。ぼくは船場の西隣の新町でSOHOをしているので、新町から船場、船場から新町を始終行き来している。今は埋め立てられて存在しないのだが、かつては二つの街を隔てる西横堀川という堀があった。その歴史的遺産のせいで、船場と新町を繋ぐ通りは数が限られている。つまり、西横堀川に橋の架かっていた通りが現在でも二つの街をつないでいるのだ。それ以外の行き止まりとなる小路は案外多い。と言っても、堀に沿って歩けば次の橋があるように、抜ける通りに出るのだが、目的地に急ぐ場合など、北側か南側かどっちの通りを選択するか頭を巡らすことになる。
真夜中の散歩などでは急ぐわけではないが、体が自然と橋の架かる通りを感じていることを知って奇妙な感慨におそわれることがある。それは、時を超えてこの街に棲息し、徘徊している巨大な軟体動物の気配を感じた、と言えなくもない。本書を読んでいると、大阪にはその巨大な軟体動物が棲息しているという、錯覚を、より確かなものしてしまう。

あとがきには本書の著者の一員である三休橋筋愛好会によって、出版の経緯が書かれている。2004年4月に開催された「三休橋フォーラム」の終了後、すぐに本書の企画が持ち上がったという。そのフォーラムとは「大阪の未来を語るー船場の背骨・三休橋筋フォーラム」と名付けられて、安藤忠雄氏の基調講演後、本書監修の橋爪紳也氏、大阪市計画調整局長の3氏による鼎談では、船場の、そして大阪のこれからが熱く語られたそうである。

そういう場から生まれた本書だけに、単なる街案内ではない。「活動」報告書だ。
下記のプロジェクトが血の通った報告によって知ることができる。

大阪水辺マップ、大阪ええはがき、船場ギャザリング、水上タクシー、船場・賑わい界、もうひとつの旅クラブ、太閤路地プロジェクト、新井ビル、堺筋倶楽部、石原ビルディング、細野ビルヂング、空堀商店街界隈長屋再生プロジェクト、鈴屋アパートメント、中古マンション+リノベーション、メビック扇町、せんばGENKI、リバーカフェSUNSET37、三休橋筋愛好会。大オオサカまち基盤、大阪名品喫茶「大大阪」、SUNSET2117?。(終了プロジェクト含む)

都市再生フィールドノート 大阪のひきだし
監修 橋爪紳也
著者 橋爪紳也+三休橋筋愛好会+中谷ノボル+酒井一光
2006年7月30日 鹿島出版会 発行