251点の「バツ」の図柄が1ページに1点づつ収録されている。大きな図柄に簡単な説明文という構成。図柄は、ピクトグラム、紋章、国旗や軍旗、機器の支柱などのX状の部分、そして絵画に表現されているX状の表現など。かけ算の記号からマルセル・デュシャンの「大ガラス」のX状に交差するポールまで、それら大量の図版を眺めているとクラクラしてしまう。
図版のほかに松岡正剛氏をはじめバツについての6編の論考がある。そのなかで高木隆司氏のものに目が止まった。×印から私たちは誤りや否定などネガティブなものを思い浮かべるが、欧米では必ずしもそうではないという。×印は自分の意志の表現というポジティブな意味で使っているという。
20年程前に初めてのコンピュータMacPlusを使い始めたころ、何かの一覧から選択させる場合に、四角をクリックすると四角内に×印が表示されるのにはいつまでたっても抵抗があった。経験的にそこが選択されることを理解したが、なぜそこが×印なのかなじめなかった。意思の表現ということで、今になってやっと納得した。単なる記号として、×印をデザインの中に使いがちだが、本書を読み、眺めていると×印に対する認識が一変する。
×バツBATZ
著者 松岡正剛、小野瀬順一、高木隆司、海野弘、山折哲雄、白川静
発行 牛若丸、2007年12月