この単行本の始まりに、ロレンス・ダレル『ジュスティーヌ』からの引用あり。クレアの言葉。
袋小路の男(群像 2003年12月号)
高校1年の大谷日向子(ひなこ)は新宿のジャズ喫茶「エグジット・ミュージック」同じ高校の2年生小田切孝を知る。それから12年間の二人の物語だが、二人は寝ない。孝はエグジット・ミュージックでバーカンのバイトをしながら小説家を目指している。日向子は大阪が本社の食品会社に就職。大阪転勤もあったり、複数の男と付き合うが孝との友だち関係は続く。
小田切孝の言い分(群像 2004年7月号)
前作と同じ日向子と孝の物語。続編ではない同じ時間の違った見方。
アーリオ オーリオ(群像 2004年10月号)
環八沿いの清掃工場で働く地方公務員の松尾哲が主人公。計器類がびっしりと埋め込まれた中央制御室とか、コンピュータ制御の清掃工場や中で働く様子が描写されていて、そこに興味を惹かれた。東北の震災瓦礫の広域処理は東京の清掃工場でも行われた。哲の工場でも燃やしたんだろうか。
中学3年生の姪との文通が本題。姪の予測がつかいない10年後に比べて38歳の自分の10年後は変わりないだろうという描写が悲哀を誘う。哲はパスタ好きで姪に毎日パスタで飽きないかと問われて、ソースを変えるから、と答える。