25日夜、大阪中央区南本町の jaz’room nu things での『”Hard Swing Bop 2”, Groove setter by AGI yuzuru』に行った。以下はこの夜の案内。
「女性にモテ過ぎる故の嫉妬から、最愛の妻に銃で射殺されたリー・モーガン。25歳という若い命を自動車事故のために散らせたクリフォード・ブラウンなどなど、50年代という時代を加速度的に生き抜いたジャズ・ミュージシャンたち。ハードバップにある緊張感は、その彼らのいきざまのようで、カッコいい。stage3は、ハードバップのグルーヴィン・ハイを基調にファンキー・バップまでを横断しよう。(阿木譲)」
遅れて行ったが、ホレス・シルバーがかかっていた。シルバーがつづき、「Senor Blues」が選曲されたときはちょっと驚いた。この夜は3回目の阿木氏のハード・バップDJイングだが、過去の2回はこうしたポピュラーな曲は除外され、抽象的なサウンドによるハード・バップを厳選していた。そのアップテンポな疾走感から都会のエキセントリックな情景を鮮明にする意図が見えていた。
おッ、「Senor Blues」は前回までの意図と違うぞ、と思っていたら、アート・ブレーキーの「Moanin’」とか、リー・モーガンの「The Sidewinder」もセレクトされる。これらのポピュラーなジャズ・ナンバーが入って、広がりのあるDJタイムとなった。ここが、前2回の純粋ハード・バップの濃密な疾走感とはちょっと違う。そう、ファンキー・ジャズとか、ソウル・ジャズとか、ジャズ・ロックと呼ばれるナンバーをぼく自身も改めて聞く、いい機会になった。
ホレス・シルバーの後はハード・バッパーたちのアルバムがとっかえ、ひっかえされる。クリフ・ジョーダン、ジョニー・グリフィン、ハンク・モブレー、ソニー・ロリンズなどだ。ロリンズについて、ちょっと書いておきたい。ロリンズといえば、「Saxophone Colossus」をはじめとするプレスティジ盤が有名だが、ほとんど同じ頃にブルーノートからもリーダー・アルバムがリリースされている。ブルーノートのはプレスティジに比べてエッジなプレイが特徴で明らかにスタンスの違いがある。このロリンズにブルーノートとプレスティジのディレクターのコンセプトの違いが現れていると思う。阿木譲氏のDJイングがブルーノートのディレクター、アルフレッド・ライオンのコンセプトを半世紀の時を隔てた現在に甦らせる試みのようにも感じる。
とっかえ、ひっかえされる12インチ・アルバムの中になんと、10インチ・アルバムが出て来る。初めて見る12インチより一代前の10インチLPにぼくは思わずステージに駆け寄って、ジャケットを手にした。ハワード・マギーとルー・ドナルドソンの2枚のビ・バップだ。フロアでは若いカップルがアップテンポなバップのリズムに合わせて、目にも止まらぬステップで踊っている。大音量のバップ・サウンドと網膜に残るステップの残像・・・、時空間が浮遊している。とてもいい感じだ。
そして、DJイングはリー・モーガンに集中する。この典型的なハード・バッパーのサウンドでテンションがぐんぐんと上がって、ジャッキー・マックリーンに変わって最高潮に達した直後に、流れはソウル・ジャズに急転回する。地下鉄終電の終わった深夜、空席ばかりの目立つスペースにソウル・ジャズがひとしきり響いた。60年前後のルー・ドナルドソンやジミー・スミス、ドナルド・バードのファンキーな、あるいはソウルフルなジャズが深夜のコンクリートジャングルに響く。あ~、いいナ~、とてもいい感じだ!
ここで最初にセレクトされた、ホレス・シルバーの「Senor Blues」が生きた来た。ジャズ・ロックとか、ファンキー、ソウルと言う時、素朴でエモーショナルな表現に焦点を定めがちだが、アルフレッド・ライオンのブルーノートに関しては、そんなに単純なことじゃない、と、ブルージーなサウンドに浸りながら考えていた。