エレクトロ・ショック / DJ ロラン・ガルニエの著作、テクノへの愛

エレクトロ・ショック400ページの大著を駆け足で読んだ。おもしろくって、前へ前と読み進んだ。話は1987年春のマンチェスターはクラブ・ハシェンダから始まる。以来、ロラン・ガルニエがDJとして歩んだ2002年の冬までの記録が綴られている。テクノへの、音楽への愛がいっぱいにつまった本だ。

本書がはじまる1987年、ぼくは初めてのコンピュータ MacPlus を買った。同時に仕事が減り続けて生活に追われるようになり、長年聞いてきた音楽だったが、そんなゆとりはなくなった。それで90年代をまるまる音楽を聞かずに、引きこもってMacと向き合っていた。だから、テクノやハウス、そしてクラブ・シーンというのもの知らずに過ごした。

2000年になり、再び音楽を聞き始めて、好きだったジャズがクラブ・ジャズとして脚光を浴びていることを知り、驚いた。昨年(2007年)の夏あたりからクラブでステップを踏む快感を覚えて、ジャズにとどまらずテクノやハウス、ヒップホップ、インダストリアルなノイズまで聞きまくった。いま、こんなぼくの90年代の空白を埋めるピッタリの本がロラン・ガルニエの『エレクトロショック』だった。

クラブ・シーンがぎっしりと詰まった本書だが、やはり最初のマンチェスターがおもしろい。ロランがDJとして歩み出す頃の記述がエキサイティングだ。とにかくクラブ・ハシェンダが頻繁に出てくる。マンチェスターはジョイ・デヴィジョンからニュー・オーダー、そしてファクトリー・レコードの街だ。『New Order Story』にはハシェンダのニュー・オーダーのライブ・シーンがある。

しかし一番熱いのはデトロイト・テクノのデトロイトを訪れた章だろう。ベルリンの壁崩壊後のラヴ・パレードなど政治的な記述はほかにないでもないが、デトロイトでは人種問題などで記述が熱い。ぼくたちは音楽を無菌室のような外界と遮断さえた空間で聞くことはできない。どうしても外界との軋轢の中でアイデンティティを意識せざるを得ない。そこに音楽への愛が育まれていくんだと思う。たぶん、ロランの視点はそういったところにあると思う。デトロイトでは、〈アンダーグラウンド・レジスタンス〉レーベルの紹介に紙数を費やしているが、とてもエキサイティングだ。

ロラン・ガルニエは有名DJとなり世界中でプレイするようになっていく。2004年には東京、京都そして大阪でプレイしている。