女性装する安冨歩さんにぼくは強く関心を持ち、同時にリスペクトしている。ぼくが彼と同じ50代なら女性装に挑戦してたかもしれないが、今の歳ではその元気がない。せいぜい、髪を伸ばすだけだ(笑)。安冨歩著『生きる技法』を買った。
ペラペラとめくっただけだが、すごい内容だと思う。「自立とは他者への依存からの脱却である」と思われているが、「依存する相手が増えるとき、人はより自立する」と本書に書いてある。頭を柔らかくして読まなければ理解できないようだ。
本書の「第1章 自立について」で痛烈に母親を批判している。まず、ここに激しく共感した。ぼくは母が他界してから母への批判を口にするようになった。母は息子を愛していると盲目的に信じていたので、母への批判をしてはいけないと感じていた。母が死んでから母のことをよく考えるようになり、ぼくは母に愛されていなかったと分かった。
「愛情のフリをして、自分に都合の良い像の押し付けをする、という陰湿なハラスメントでした」と安冨さんは母親のことを書いている。ぼくの母はそれほど強い女性ではなかったのでハラスメントを感じることはなかったけど、自分に都合の良い像の押し付けをする、という点では同じだった。何かにつけ「世間体」を重視する母の姿勢にぼくは苦しみ続けていた。
小学生の途中から中学1年までぼくは意に反して級長に選ばれていた。それはすごいプレッシャーだったんだけど、母はぼくの苦痛を知ることがないまま、母の愛は絶頂に達していた。その延長にある母の描くぼくの未来は、大学に進み、大きな会社に入り、結婚をして子供のいる家庭を作ることだった。それが母の信じる世間体を満足させる像であり、それをぼくに押し付けたわけだが、決して愛情からではないことをぼくはうすうす気づいていた。
というような漠然と感じていたことを、ぼくに文章化を迫るパワーを本書は秘めているんだと思う。
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