ジム・トンプスン『内なる殺人者』を読んだ

映画を見て原作を読むなんてことはほとんどないが珍しく読んだ。映画はウィンターボトム監督の『キラー・インサイド・ミー』。

DVDで映画『シン・シティ』を見たんだ。派手なクライム・アクションだけど、実はプラトニックなラブストーリにホロリとさせられた。引退間近の刑事(ブルース・ウィリス)が小児性愛者から幼い少女を救う。しかし、ブルースは罠にはめられて独房に入れられる。少女は彼に手紙を書き続ける。何年も経って、刑務所を出たブルースは定期的な手紙が途絶えている少女の身を案じて彼女を捜す。美しく成長した少女は酒場のストリッパーで、刑事を待っていた。これがジェシカ・アルバで、いいなーと思って見ていた。

確か、この女優は前にも見ていることを思い出して調べたらウィンターボトム監督の「キラー・インサイド・ミー(The Killer Inside Me)だった。うろ覚えのこの映画が気になって、ちょっとのつもりで見たらおもしろくて最後まで見てしまった。原題通りのちょっとないぐらいに恐ろしい映画だった。

50年代のテキサスの田舎町が舞台で、蒸し暑い熱気が伝わってくる。蒸し暑い夜にエアコンを切って見るのに最適な映画だった。この映画のジェシカ・アルバは町はずれのコテージに住み売春婦をやっている。主人公の若い保安官助手はこの売春婦と出会って、出口のない愛に堕ちて破滅に向かうというラブストーリーだった。

保安官助手は町でも評判の礼儀正しく紳士的な男で、教師をしている恋人がいる。しかし、少年の頃に幼い女の子とのことで忘れられない傷を負っている。魅力的な売春婦と出会って押さえ続けていた欲望が爆発してしまい、破滅に向かって堕ちて行く。おもしろいと書いたけどイヤな映画でもあり、単なるクライム・ムービーなら最後まで見てないだろう。ウィンターボトム監督だから、ドキュメンタリータッチのような乾いたところがあって、見続けることができたと思う。

主人公の保安官助手はイヤな男なんだが、気になってしかたがない。いくらフィクションとはいえなぜあんなに殺人を繰り返すことができるんだろう。カミさんが原作の小説を持っているというので出してもらった。映画では分かりにくかった細部を確認するためにひろい読みをしていたけど、おもしろくて最初からきちんと読んでしまった。

映画は原作に忠実に作られている。でも、映画だけでは理解できない細部が小説を読むとよく分かった。よく分かって、さらに怖いストーリーだと思った。

内なる殺人者 (河出文庫)
ジム トンプスン
河出書房新社
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