読書メモ:絲山秋子著『スモールトーク』

スモールトーク

『スモールトーク』というタイトルから始めは小説じゃないと思っていた。対談集かエッセイか、そんな単行本だと思ってたけど、読んだら小説だった。カー雑誌の連載だったようだが、読めばそれ以外にないだろうことが分かる。

著者はポップミュージックをよく小説に取り入れる。本書のタイトル「スモールトーク」はスクリッティ・ポリッティのナンバーだ。YouTubeにあるので聞いた(Scritti Polliti Small Talk (HQ) – YouTube)。ぼくは全く知らないバンド、うんうん、お気に入りの車でこんな音楽を聞きながらドライブするのかと妙に納得した(ぼくはドライブというものを経験していない)。主人公はアルファ145に乗っている。そこにスクリッティ・ポリッティのCDがカーステレオに入れっぱなしになっている。

6回の連載でヨーロッパの高級車を一台、一台小説の中に取り入れて、車礼賛かと思ったら、車を毛嫌いするかもなんて気持ちが芽生え、最後で主人公は自分の145を捨てる。駐車場代が口座から落ち続けているが、その駐車場の中で145は錆、ホコリにまみれているだろうと想像する。ひょっとして145が眠りから覚めて意思をもつようなことがあったなら、カーステレオに入れっぱなしのCDから Small Talk が聴こえることだってあるかもしれない、というシュールな終わりだ。

二玄社、2005年6月発行