ジャズが聞こえるニール・ジョーダンの短編小説『チュニジアの夜』

ニール・ジョーダン『チュニジアの夜』(国書刊行会、1994年発行)

映画『クライング・ゲーム』や『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』などで知られるアイルランドの映画監督ニール・ジョーダンが25才(1976年)のときに発表した小説。短編集『チュニジアの夜』の中にある同じタイトルの短編を読んで、いいなーと思った。行間からジャズが聞こえる。ジャズ好きにはたまらない。

毎年、ダブリンの南にあるリゾート地に、夏の間だけやってくる14才の少年が主人公。父親がサックスのバンドマンで、夏になるとこの地のクラブのバンドに雇われている。小屋のような家を借りて、少年は父と姉と3人で2ヶ月間暮らす。

少年は、このリゾート地に住む一人の少女を意識している。この夏も、彼女はいた。17才のはずだ。少年はこの少女が立ち寄る先で待ち、見つめている。あるいは同世代の少年たちと一緒に海岸遊んでいるが、父親の演奏に付き合うこともある。

父親はクラブでスイングジャズを演奏している。家で、少年のピアノ伴奏で、父親がスタンダードナンバーを吹く。少年は父親に付き合ってやっているだけ。父親は少年の才能を認めて、彼にアルトサックスを買い与えているが、少年はジャズに熱心になれない。少年たちと遊び、少女に関心を寄せる方に熱心だ。

そんなある日、ラジオから流れるジャズに釘付けになる。アナウンサーの声でチャーリー・パーカというアルトサックス奏者だと知る。そしてパーカーのレコード『チュニジアの夜』を買って聞き、ジャズに目覚める。

17才の彼女の肢体、成熟していく姉、時代に取り残されるジャズマンとしての父の疲労。それらを包みこむように漂う海辺のリゾート地の湿って淀んだ空気。そこに響く、バード(チャーリー・パーカー)のジャズ(ビバップ)がリアルに想像できた。

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