悲しみがまとい付くゲイ小説『ダンサー・フロム・ザ・ダンス』を読む

アンドリュー・ホラーラン著、栗原和代訳(マガジンハウス、1995年7月発行)
Dancer from the dance by Andrew Holleran, 1978

1970年代、ニューヨークの狂気と絶望のゲイライフを描いた素晴らしい小説だ。この小説にはエイズは描かれていないが、それを予感させる描写がある。80年代初めのエイズによって、70年代のゲイライフは以後と分断されている。だから、70年代は二度と体験することのできない狂気と絶望のゲイライフであったらしい。70年代のマンハッタンはディスコの時代でもあった。ゲイの存在なしに、当時のディスコ・カルチャーを語ることはできない。

「彼はぼくにとって、ある冬ディスコで見かけるようになった常連に過ぎなかった。」と小説の本編は始まる。彼とは小説の主人公であり、ぼくとは著者のアンドリュー・ホラーラン自身という構成の物語だ。

1971年に開店した、一部の人々にしか知られていないディスコの話が最初に出てくる。物語の後半は、「ディスコが中産階級のオモチャ」になってダメになる70年代中頃というわけで、ディスコ・カルチャーの歴史をトレースしている。ここんところが、この小説を読むきっかけだった。しかし、読後の印象は、いつまでも悲しみがまとい付く、忘れられない美しい小説だった。

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カテゴリー: 読書