西田宗千佳 著(朝日新聞出版[朝日新書154]、2009年1月発行)
-ウェブ2.0の先にくるもの (朝日新書)
朝日新聞出版
売り上げランキング: 13943
「クラウド」って言葉を目にするけど、全く知らなかったので本書を読んだ。本書は一般の人にも分かりやすく書かれた「クラウド・コンピューティング」の啓蒙書。著者はクラウドを体感することを勧めている。巻末には、「クラウドを体験する」一覧があり、様々なサービスやテクノロジーが紹介されている。
で、何点か実際にやってみました。まず、前から気になっていた「グーグル・ドキュメント」。マイクロソフトのOfficeにあるアプリケーションが無料で使用できる。実際のOfficeと比べるなら使い勝手は良くないというものの、それほど悪くはない。メインのマシンでファイルを作成すると、他のMacでもWindowsマシンでも同じファイルが即座に見られることに少なからず感動する。
あのPhotoshopのWeb対応版、「Photoshop.com」には少し驚いた。「Remember the Milk」はToDoリストを管理するウェブアプリだが、パソコンとケータイ電話の両方で利用できる。これはすぐにでも使おうと思った。
クラウド・コンピューティングでファイルのバックアップに気を使わなくてすむ。他のマシンでも手軽にファイルを利用できる。この2点が最大のメリットだろう。これはかなり魅力がある。しかし、ネットに繋がることができなければ、何もできない。これに対する対策として、マイクロソフトのライブメッシュやアップルのモバイル・ミー、グーグルのGearsなどがある。実際にクラウド・コンピューティングを使う場合は、この対策は避けられないと思う。ただし、お金をかけたくない気持ちもある。
写真を共有したり、保管するための「フリッカー」もクラウドのひとつだ。写真を安全に保管する意味で前から試しているが、本格的に利用するとなると有料サービスを選択せざるを得ないので躊躇している。ともかく、写真の保管はネットにしようと決めている。自分のミスから写真データを失ったこと、バックアップに気を使うことなどを考慮すると、ネット上に保管するほうが、自分で保管するより安全だと思っている。
クラウドという言葉は知らなかってけれど、気分は十分にクラウド・コンピューティングになっていたと、本書を読んで気づいた。本書の冒頭で以下のように説明してある。
「クラウド・コンピューティング」とは、ネットの持つ力を活用した、新しいコンピューティングの方法である。ワープロやメールなどのアプリケーションソフトもデータもネット上にあって、必要な時、必要な場所で呼び出して使う、というイメージだ。雲から降る雨のように、コンピューターの能力や情報が降ってくる、というイメージから「クラウド・コンピューティング」と名付けられている。(p1)
もともとは、2006年8月、カリフォルニアの「サーチエンジン戦略会議」でグーグルのエリック・シュミットCEOが「雲(クラウド)のような、巨大なインターネットにアクセスすれば、その利益、恵みの雨を受けられる時代になっています」と発言したのが「クラウド・コンピューティング」という言葉の始まりだそうだ。シュミットCEOが生み出した言葉だとしても、グーグルが生み出した技術ではない。シュミット氏が状況に「クラウド」という名前をつけた結果、長く続いてきた複数の同時並行的なトレンドに明確な方向性が生まれたのだと著者は書いている。
無線LANとか、ブロードバンド、ユビキタス、Ajax、オープンソース、スマートフォン、Gメール、ウェブ2.0、グーグルドキュメント、データセンター、ネットブック、ウェブアプリなどのテクノロジーやサービスが「クラウド・コンピューティング」を可能にしたわけだ。それらの恩恵を受けているぼくたちもいつの間にか、クラウドな気分に浸りつつかるのだと思う。