Matthias Tanzmann のプレイはすごく遅めのテンポで始まった。そのスローなテンポに驚いたが、ビートは重い。テンポは徐々に感じられないぐらいにゆっくりとゆっくりとアップしていった。最終的にはアップテンポで盛り上げるが、また下がるといった具合にゆっくりとした起伏を繰り返している。2時間半のプレイ中のテンポの変化がなめらかで、まるでプログラミングされているみたいに感じられた。
とても長く続いたように感じたミディアム・テンポだが、ぼくの体はそのテンポに酔っていた。ジャズを十代から聞いていて、最近もよく聞いている。アップテンポのナンバーで、聞く側のテンションが上がるのは簡単だ。しかし、ミディアムテンポの良さを知ったのは最近のことだ。その絶妙なテンポに体が反応した。
Matthias Tanzmann はジャーマン・ハウスだが、前の日は東ベルリン出身 Marcel Dettmann のテクノを聞いていた。テクノの流れだと21日は、Grand Cafe の Ben Klock と Shed に行くべきだったかもしれない。迷ったけれど、Onzieme の方にしたのは「ELEKTROJUNKIE」のパーティだったから。去年は、Hell と DJ T と2回行っているが、どちらも素晴らしかった。
Tanzmann はその二人に比べるなら少し単調というか音の構成に深みがなくて物足りなかった。しかし、踊りやすくて、踊り続けた。前よりもさらに大勢の入りだったと思うが、年齢は若干下がっているように見えた。DJ のせいか、たまたまなのか分からない。
この夜は、ぼくはあまりエキサイティングしないように気をつけた。前回は、前列のオーディエンスたちと盛り上がり、その写真があるメジャーなサイトのパーティ情報ページに掲載されていた。その写真の中の自分を見て、ちょっといやになった。
だからこの夜は淡々と踊っていようと最初から思っていた。しかし、フロアーで一人の男性を見たとき、自分はまだまだと感じた。その男性に比べるならぼくは明らかに肩に力が入っている。フロアーのオーディエンスたちより一世代上な彼は、一人で淡々とリズムを刻んでいた。動きは小さいがすごくさまになっている。たぶん、クラブ通いを何年も続けて身についた動きだと、勝手に想像して、ぼくもああいう風になりたいと思った。