クローム襲撃 / ウィリアム・ギブスン著サイバーパンクSF

ウィリアム・ギブスン著、浅倉久志・ほか訳(早川書房、1987年発行)
“Burning Chrome” Copyright 1986 by William Gibson

『ニューロマンサー』の著者、ウィリアム・ギブスンの初期の短編集。10編の短編からなるが、以下の5作品がすごい。
・辺境(初出「オムニ」1981年10月号)
・ニュー・ローズ・ホテル(初出「オムニ」1984年7月号)
・冬のマーケット(初出「ヴァンクーヴァー・マがジン」1985年11月号)
・クローム襲撃(初出「オムニ」1982年7月号)

「辺境」は本格SFだがおもしろい。それ以外の4作品はウィリアム・ギブスンの長編小説を読む上で、欠かせない短編小説だ。これらの作品がアイデアとなって、長編小説ができあがっている。

ギブスンの小説は思い出、記憶などが、ストーリーの中に頻繁に挿入されるので、さらっと飛ばし読みをしていると、わけが分からなくなる。短編でも同じだが,ギブスンの小説の構造に短編で慣れておくと長編が読みやすくなる。それに、さまざまなテクノロジーなどもそのまま長編に応用されている。

そして、ウィリアム・ギブスンの作品はサイバーパンクSFであると同時に、非常にセンチメンタルな恋愛小説でもある。高度なテクノロジーばかりに関心を奪われていてはギブスンの世界に没入できない。主人公と共に悲恋で胸いっぱいな感情に浸るのがギブスンの小説の快感かも・・・。

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カテゴリー: 読書