ジャズのハードバップを確認するとき、ぼくはこのアルバムにいつも戻ってくる。マイルスが、ロリンズが、アート・ブレーキーが、そして若いジャッキー・マクリーンがハードバップのビートでぼくの身体を震わせてくれる。アップテンポの〈Dig〉と〈Denial〉、スローな〈Bluing〉、そしてミディアムテンポの〈Out Of The Blue〉。これらマイルスのナンバーから発信しているのはハードバップのビートだ。ハードバップはここから始まる。
『ドラッグ・カルチャー』(マーティン・トーゴフ著、清流出版)を読んでいたら、『Dig』を聞きたくなった。この本はかなりヤバイ。1945年から2000年までのアメリカ文化にドラッグが与えた影響を考察する内容だ。断っておくが、ドラッグを礼賛するものではない。逆にその恐さが分かる内容になっている。
本書の中ではチャーリー・パーカーが圧倒的な存在感だ。そのパーカーを慕う若いジャッキー・マクリーンがジャンキーになっていくさまが描写されている。『Dig』はマクリーンの初レコーディングだが、この日が興味深い。この頃はすっかりジャンキーだったマクリーンだが、この日はヘロインが手に入らず薬切れのパニック状態でスタジオ入りしたとある。おまけにパーカー本人がセッションの見学に来ているのを見てすっかりうろたえた、というから同情するしかない。
気分が悪いままにスタジオ入りしたが、そのときにはロリンズをはじめ、メンバーはみんなハイなっていた。それが彼には辛かった。ここんところを読んで、アルバム『Dig』の1曲目の〈Dig〉でテーマが終わって始まるロリンズのソロを聞くと、思わず嬉しくなってしまう。
Miles Davis / Dig
Miles Davis, trumpet
Jackie McLean, alto sax
Sonny Rollins, tenor sax
Walter Bishop Jr., piano
Tommy Potter, bass
Art Blakey, drums
1951年10月5日録音
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