児童向けの小説だが内容はかなりきつくて、読後は暗い気持ちになる。一応、テレビの報道番組や活字を通してアフガニスタンのことを少しは知っている。しかし、この小説に描かれた過酷な生活はショックだ。少しは報道されているだけに、ここに描かれた現実が誇張でないことが分かるので、余計に衝撃が大きい。
タリバン政権下のカブールの一家族が描かれている。女性は男性同伴でなければ、外へ出ることはできない。父親がタリバン兵に連れ去られた11才の少女パヴァーナは、一家の窮状を救うために髪を切った。少年になってカブールの街で金を稼ぐ。
著者のデボラ・エリスはカナダ人。1997年と1999年の2度、パキスタンのアフガン難民キャンプをおとずれ、タリバン支配下のアフガニスタンについて綿密な聞き取り調査をおこなっている。本書は2000年に発行されている。だから、2001年9月の同時多発テロ以前のアフガニスタンが描かれている。
主人公のパアヴァーナは生まれてからずっと、内戦による爆撃が続く生活。その上、日常的に地雷の恐怖。そしてタリバンの過酷な支配。やはり男装で働く友だちはそんなカブールを脱出してフランスで暮らすことを夢見て、その実現に向かって歩んでいる。
デボラ・エリス 作
もりうちすみこ 訳
さ・え・ら書房、2002年2月発行