宋家の三姉妹 / 激動の中国近代史を描くメイベル・チャン監督映画

宋家の三姉妹1997年、香港=日本合作。
中国近代史の中に宗家の三姉妹を描いた映画。父の強い教育方針のもとに三姉妹は幼くしてアメリカへ留学する。留学までの幼少時代の描写は短いプロローグで、留学から帰った成人の姉妹から物語は始まる。

長女(ミシェール・ヨー)・宗靄齢は財閥の御曹司・孔祥煕と結婚。
次女(マギー・チャン)・慶齢は革命家・孫文と結婚。
三女(ヴィヴィアン・ウー)・美齢は後の国民党政府最高指導者・蒋介石と結婚。

三人はほぼ平等に描かれるが、次女役のマギー・チャンが役柄にも恵まれてか抜群に良かった。長女と三女は愛情と同時に周囲から祝福される結婚だったの対し、次女は革命家孫文の秘書を勤めながら、彼を愛してしまう。孫文は父親の親友で、当然、親子程の歳の違いもあり、父親の激高をかう。

駆け落ち同然の結婚だが、彼女は革命家孫文の妻であると同時に同志として彼を支える。志半ばで病死した孫文亡き後、蒋介石が国民党の指導者となるが、次女は蒋介石の過剰な共産党弾圧に反対し、国民党を脱退する。孫文未亡人として国民のカリスマ的な存在となっていた次女慶齢の国民党脱退宣言は大変に重要な行動だが、このシーンのマギー・チャンが素晴らしい。孫文のもとへ行くために、家を出奔する次女を見送る母。孫文亡き後、ソ連へ出国する際も母だけが次女を見送る。これらも印象に深く残るシーンだ。

歴史映画として見ても、孫文や蒋介石については余り知らなかったので、理解できてよかった。ただ、孫文死後の次女慶齢は中国共産党に接近していくが、そこのところは全く描かれていない。一度だけ、窮地に陥った蒋介石を助けるために次女が三女に周恩来の名前を口にするだけだった。周恩来の名が出てくるだけで次女慶齢の存在の重みが増したシーンだった。

辛亥革命、西安事件、日中戦争、国民党と共産党の内戦・・・。非常に複雑な中国近代史だが勉強になった。ただ、歴史を描くより、三姉妹の人間を描くことに重きが置かれているので、歴史的事実には余り突っ込んでいない。そうは言っても、侯孝賢監督の『悲情城市』、陳凱歌監督の『さらば、わが愛/覇王別姫』の方が歴史的描写も人間描写も優れていたと思う。

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カテゴリー: Movie