ビロードうさぎ / マージョリィ・ウィリアムズ(文)とウィリアム・ニコルソン(絵)の絵本

ビロードうさぎ連日の猛暑の中で、クリスマスに贈られたビロードのうさぎの話は合わないかもしれない。でも、本書の重要なシーンは春から初夏への草むらにあるので、夏草の匂いを思い出しながら読むと気分が盛上がった。

この物語は絵と抄訳が酒井駒子氏の絵本『ビロードのうさぎ』で1年前に読んでいる。2007年の酒井さんの絵の方が今風でなじみやすい。しかし、古典的名作の本書を1922年に出版された体裁(翻訳だが)で読んでよかった。絵は確かに古いが古典の重みがある。

幼い男の子はクリスマスにプレゼントされたぬいぐるみのうさぎを友だちのようにして、遊ぶときも寝るときも一緒にすごす。うさぎはまだ男の子に可愛がれる前に、木馬からオモチャが本物になる話を聞かされて感動する。これはぬいぐるみが本物になるとはどういうことかをテーマにした素晴らしいストーリーだ。

作者のマージョリィ・ウィリアムズについて本書で簡単に紹介されている。1881年ロンドンに生まれ、結婚後アメリカに渡り、大人向けの小説を書いたという。1922年に絵本作家に転身して、最初に書いたのがこの『ビロードうさぎ』で、ほかに30点ほどの作品を残しているが、後世に残した作品は本作品だけだという。そうだろうなー、こんな傑作は奇跡的なひらめきでしか生まれないと思う。

石井桃子訳、童話館出版、2002年3月発行

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カテゴリー: 絵本