Tico and the Golden Wings / Leo Lionni の絵本

Tico and the Golden Wings昔々、わたしはTicoという名前の小鳥を知っていた。彼はわたしの肩に止まり、花やシダ、高い木の話をしてくれた。ある日、Ticoは彼自身の物語を語りはじめた。とこの絵本は始まる。なかなか意味深で期待を抱かせる始まりだ。

Ticoには羽がなかった。仲間のように空を飛ぶことができなかった。仲間は木の実をTicoに届けてくれた。ある日、Ticoは黄金の羽を夢に見た。ある夏の夜、不思議な鳥が現れて、願いをかなえてあがると言う。Ticoは夢に見た黄金の羽が願いだと伝えるや、不思議な鳥は消え、Ticoは黄金の羽を身につけていた。その羽で彼は空を飛び回る。

そんな黄金の羽を持ったTicoを仲間は遠ざけるようになり、彼はひとりぼっちになる。ある日、貧しい篭売りの話を聞き、Ticoは同情して一本の黄金の羽を抜き取って篭売りに与える。そのようにしてTicoは次々と羽を抜いていく。その後には黒いビロードのような羽が見えている。ついには、全ての黄金の羽を抜き取ったとき、Ticoは仲間と同じ黒い羽を持った小鳥となり、仲間に迎えられるというお話。

という具合で始めは期待したが、教育的配慮を強く感じさせるストーリーでがっかりだった。1964年に出版されたが、今出ているのは1992年のリニューアル版だ。たぶん、初版を知らないので何とも言えないが、羽の金色の印刷に工夫がこらされてのリニューアルだと思う。表紙も、本文もTicoの羽の金色は見事なものだ。絵は極端なリアリズムではないが、木々や葉脈が描かれた葉からなるパターンなど、緻密な表現が別世界を想像させる。それらが完全に手描きのせいで、ゆがみがあって暖かい。CGに慣れた目からは新鮮に見える。

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カテゴリー: 絵本