ジャズ評論家中山康樹トークイベント「マイルスの夏、1969」@845

Bitches Brew昨日の28日午後、『マイルスを聴け!』の著者、中山康樹さんのトークイベントに行った。マイルスが1969年にレコーディングした『Bitches Brew』の成立を検証するするイベントだが、トークと12曲の関連曲からなる構成だった。

『Bitches Brew』はたまに聞くものの大作すぎて、正直漠然と付き合っているだけだった。69年のレコーディングに向けて、マイルスは周到に準備を重ねていたというのが中山氏の見解だ。その準備の検証によって、今までは過去の名盤でしかなかった『Bitches Brew』が、リアルな手応えあるものに変わっていく。とても濃密な時間だった。

マイルスの準備だけでなく、プロデューサーの Teo Macero や Alan Douglas、そしてコンポーザーの Gil Evans らの動向が密接にからみ合って69年になだれこんでいく。Jimi Hendrix がマイルスに与えた影響も大きい。これらの人物の具体的なエピソードはほんとおもしろかった。

関連資料的に逐一聞かせてくれた曲がムチャ良かった。例えば、プロデューサーの Alan Douglasを紹介するのに、Duke Ellington「Money Jungle」(1962年)を聞かせる。なんと、Duke Ellington、Charles Mingus、Max Roach のピアノ・トリオ。こんなEllingtonは聞いたことがない。Jimi Hendrix も大きな音量で聞けたのもうれしかった。

もひとつ、エレクトリック・ベースの Harvey Brooks を紹介するためにかけたナンバー「Killing Floor」も良かった。ほか、『1969 Miles:Second Night』の「Spanish Key」が聞けたりと、マニアックな選曲を聞けただけでも、参加してほんとうに良かったと思った。なお、お話の内容は、季刊誌『en-taxi』で連載中のものと関連しているらしい。ぼくはまだその季刊誌を読んでいないのでよく分からない。というかこの1969年のマイルスは来年をメドに一冊の本にまとめると語っていた。