オランダの絵本で、マリット・テルンヴィストの絵は初めてだが、一目で気に入ってしまった。中世ヨーロッパが舞台ということで、リスベート・ツヴェルガーを思い出させる。ツヴェルガーの端正でストイックな絵に対して、テルンクヴィストはヒューマンな温もりのあるタッチだ。よく見るとずいぶんと違うけど、テルンクヴィストを見ているとツヴェルガーの絵を思ってしまう。たぶん、スケール感に共通のものを感じるのかもしれない。
作家トーン・テレヘンのストーリーだが、ちょっと古風で絵に比べるなら輝きは少し薄い。魔女や王の住んでいた中世のお話。ピッキとはムチャクチャに小さな魔女で、自分に他の魔女のような魔法を使う能力があるのか試してみるところから始まる。
ピッキは小さなほうきに乗って空から地上を見ているので、絵本の見開きいっぱいに地上の様子が描かれている。お城があり、沼があり、農民が畑を耕していたりする風景が広がっている。よく見ると、森の中ではオオカミが人間を丸飲みにしている様子がユーモラスに描かれていたりする。非常に細かいところまでこだわった絵なのでとても丁寧に見てしまった。
ピッキは迷子の少年を操って、悪い王を追放するなんて大それたことをやってしまう。その少年が英雄にならず、普通の少年に戻って人々も忘れてしまうところが、現代のストーリーなのかもしれない。
小さな小さな魔女ピッキ
文 トーン・テレヘン
絵 マリット・テルンヴィスト
訳 長山さき
発行 徳間書店、2006年12月