旅するヤギはバラードを歌う / ジャン=クロード・ムルルヴァの愉快な物語

旅するヤギはバラードを歌う (ハリネズミの本箱)先月、ジャン=クロード・ムルルヴァの『トメック』を読んで、同作家の本書が気になっていた。『旅するヤギはバラードを歌う』なんてタイトルはとても気になる。愉快な物語で、仕事が忙しい間にちょこちょこと読んでいたけれど、気晴らしにちょうどよかった。ストーリーづくりがうまいので、主人公がどーなるんかなーって気になってしまう。愉快なストーリーに人情と友情がほどよくミックスされている。

ヤギたちの住む村の青年コルヌビックが主人公。彼はバンジョーを弾きながら歌う村一番のシンガーだ。その彼は失恋の痛手から村を出て、放浪の旅につく。旅の途中、偶然のことだが、コウノトリが荷物をコルヌビックに託す。赤ん坊といいたいところだけど、実は小さなヤマネ。

物語でははっきりと書いていないけれど、ムナジロテンという部族がヤマネを食料として捕獲しつくしてしまったらしい。ムナジロテンの追ってからヤマネの部族が必死で逃がした一匹のヤマネがコルヌピックに託されたというわけ。その後の旅は、ムナジロテンの追ってから逃げる逃避行となる。その中でヤマネの子とヤギのコルヌピックの友情が育っていくというわけ。

旅の途中、可愛いヤマネとの突然の別離、その後に出会ったあやしい医者のニワトリとの友情。そのニワトリの助けでムナジロテンの城郭に侵入するというスルリあり笑いありの冒険譚となっている。もちろん最後はハッピーエンドだが、気楽に楽しめる。『トメック』も同じように旅の物語だが、それに比べるなら本書はエンターテイメントな物語となっている。

旅するヤギはバラードを歌う
著者 ジャン=クロード・ムルルヴァ
訳者 山本知子
発行 早川書房、2006年10月

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カテゴリー: 読書