『夜のパパ』の続編。2、3年後の物語らしく、ユリアはかなり成長している。ユリアが夜のパパと呼んでいた青年ペーテルは、前作に引き続いて相変わらず、夜になるとユリアの家にやってくる。母親はシングルマザーでユリアと二人暮らし。看護士をしているが、夜勤になったときに幼いユリア一人で夜を過ごさせたくなくて、新聞広告で夜だけ家に居てくれる人を募集したんだ。夜型人間のペーテルは石の研究家で部屋が狭くて困っていたので広告に応募したわけ。
あれから2、3年、ユリアはもう一人で十分にやっていけると母親も周りも本人でさえ分かっているが、ペーテルを断れないでいる。今や、ユリアもペーテルもお互いに相手を必要としている。だからこそ、ユリアはペーテルに対して素直になれないときがしばしばある。でも、母親とはできない会話もペーテルとなら楽しむことができるなど、彼とはうまくやっていきたい。それで彼の気を悪くしないように、とても気を使っている。それがペーテルに分かっているんだか、どうだか歯がゆい。
そんな少女と青年の微妙な交流が本書のストーリーを形作っている。街の再開発のために、ユリアの住んでいる家が取り壊されるらしい。その家は古くて立派で大きい。庭も大きい。確かに、母子で住むには大きすぎる家で母親は行政の要請に異存はなく、さっさと市が用意してくれたアパートへの引越準備を始める。
ユリアはというと家に愛着があって行政に素直に従えない。ペーテルを巻き込んで、家の取り壊しを阻止するためのアイデアに頭をしぼり、計画を実行する。その過程でペーテルとの絆は強くなり、ユリアはポジティブな人間関係から得られる喜びを実感する。とても前向きな気持ちを表現した内容だが、前作の方が緊張感があって良かったかな。
夜のパパとユリアのひみつ
著者 マリア・グリーペ((c) Maria Gripe, 1971)
挿絵 ハラルド・グリーペ
訳者 大久保貞子
発行 ブッキング、2004年11月