釜ヶ崎の無国籍的風景に驚く

今日は、いつもは地下鉄を利用している所用先へ自転車で行ったので、その帰り、少し遠回りをして西成区萩之茶屋、通称釜ヶ崎一帯をブラブラしてきた。昼過ぎのことだったが、住人が大勢街にたたずみ、街にただようテンションが高くてバッグに入れたカメラを取り出す勇気はなかった。で、このカテゴリーの記事は写真付きを原則としていたけど、ここに写真はない。プロのカメラマンが本気で入ればすごいカットにいくらでも出会えると思った。

なぜ、急に釜ヶ崎を歩きたくなったかというと、先日、ヴィム・ベンダース監督の映画『ランド・オブ・プレンティ』を見たから。この映画はアメリカ生まれのアメリカ人だが、アフリカや中東で育ち、今はテルアビブに住み平和活動をしている20才の女性が、叔父を捜しにロサンゼルスへ来るところから始まる。彼女が身を寄せる先が貧民街でホームレスに慈善事業をしているキリスト教教会なわけ。

空港から車で、その地域に近づくにつれ、道端のホームレスの多いのに彼女は驚く、出迎えの牧師はここに全米の貧困が凝縮されているが、世間にはこのことは余り知られていない、というような説明をする。彼女はテルアビブにいると、このような貧困地帯がアメリカにあることは信じられないと驚く。

ぼくはあのテルアビブでアラブ人と平和活動をしている人間が都市の貧困地帯を目の当たりにいて驚くということ自体に驚いたわけ。だって、この映画そっくりな場所は大阪にもあるんだもん。それが釜ヶ崎、今日行ってみたらヴィム・ベンダースの映像よりも、こっちの方がヤバかった。もしかしら映画の場面はもっと激しい地帯を避けているのかもしれない。

有名な三角公園(現在の大阪ではアメ村の三角公園が有名だが、かつては釜ヶ崎の三角公園の方が有名だった)をグルグル回る。公園内には常設の炊き出し所がある。もちろん周辺一帯はホームレスのテントで埋まっている。住民も大勢外に出ている。今池商店街を横断して、西成署前の道は殺風景なので一本西側に道に入ると驚いた。

萩之茶屋小学校の裏側の道になると思うが、屋台が道の両側に延々と並んでいる。これはムチャいい感じ。まだ開けてない屋台も多いが、半分以上は営業していて、昼間から酒を飲んでいる。まったくの無国籍的風景。この道も外で時間をつぶしている住民が大勢。ヴィム・ベンダースの映画のような慈善事業をしている教会もあった。

数ヶ月前に大阪は始めてという、東京からやってきた知人を案内して道頓堀に入った時、彼女は日本じゃないみたい! と大声をあげていたが、ぼくもまた今日は、屋台が並ぶ釜ヶ崎の無戸籍的風景を前に、ここは日本じゃないよ、と思ってしまった。釜ヶ崎は最高にディープな街だった。そのうちに、ここで飲み食いをしてみたい・・・。