Black Music のパーティ「Big Ball vol.8」

1193321222この10月は8日に Sound-channel、12日は alc、そして21日はアメリカ村の香音の「Big Ball vol.8」パーティへ行った。3ヵ所のどこでもヒップホップが聞けた。

ぼくは80年代の中頃から00年代の中頃までの20年間は生活に追われて、音楽を聞く余裕がなかったんで、この期間に広まったヒップホップをほとんど知らない。その上、ヒップホップに対して偏見に近い誤解があって、長いことまったく受け入れることはなかった。

今はヒップホップに対して、昨年の始めから意識的に聞き続けている50年代-60年代のジャズ(ハードバップ)と共通するスピリットを見つけ出している。ぼくがジャズを聞き始めるのは60年代の中頃からでハードバップだった。60年代後半にはアメリカの先鋭的な黒人の詩人、評論家のリロイ・ジョーンズの影響からフリージャズを聞き始めた。しかし70年代後半にはフリージャズを聞かなくなり、関心はパンクロックに向かった。

70年代後半のフリージャズだが、ミュージックというよりはアート的なパフォーマンスに陥ったと思う。その頃、エリート層に属する裕福な友人の山中の家に泊まり込んでバッハや現代音楽と共にフリージャズを聞いていた。つまり音楽を鑑賞していたのだと思う。そんなことを数年続けていたが、ぼくの趣味じゃないって気づいて友人と別れてパンクロックに走った。ぼくは鑑賞する音楽じゃなくって、共感できるサウンドを求めていた。エリートではない労働者のぼくには、エリート層の聞く音楽よりもパンクロックが似合っていた。

「Big Ball vol.8」のフライヤーには「Hip Hop, Soul, Roots Reggae, R&B, Jazz… Black Music」と書かれている。そー、ぼくはいつだって Black Music を求めている。1969年に翻訳出版されたリロイ・ジョーンズの本『ブラック・ミュージック』は、
「たいていのジャズ批評家は、白人アメリカ人だったが、たいていの重要なジャズ・ミュージシャンは、そうではなかった。」
と始まる。

今の Black Music シーンでもまだ40年前のリロイ・ジョーンズのスピリットは生きている。「Big Ball vol.8」のクラウドでいっぱいのパーティに入っていったとき、ぼくはその「現場」を実感した。鑑賞じゃなくって、共感の現場だ。同時に生活の現場とも、人生の現場とも言ってもいいかもしれない。

「Big Ball vol.8」は AKE-B さんと CHIRO さんが運営するパーティとMCで紹介していた。この二人のソウルフルな女性シンガーの歌にはほんとうに酔ってしまった。路地裏バンドがフリースタイルをはじめて、ラッパーが群がってサイファー(輪)を作った。その外縁に交じって、延々と続くフリースタイルのライムを聞き続けた。ちょっと疲れたけれど、とてもいい夜だった。