1955年イタリア映画。アントニオーニ監督がまだ無名時代の作品。この『女ともだち』、『さすらい』(57年)、『情事』(59年)と続き、『情事』がカンヌ映画祭の審査員賞を受けてから監督は国際的脚光を浴びることになる。『女ともだち』は原作がイタリアの作家チェーザレ・パヴェーゼの同名の小説。パヴェーゼはトリノ駅前のホテルで睡眠薬自殺をして亡くなっている。ぼくは20代の頃にこの小説を読んでいる。特に印象に残る小説ではないが、この小説の始まりがやはりトリノのホテルでの若い女性の自殺未遂で、これが作家の最後と重なって気になる小説だった。
今までもほんの数回しか見ていない映画だが、あわただしく人間関係が変化したこの夏だったので、その夏の終わりに余りにピッタリの映画なので驚いた・・・。
主人公の中年女性クレリアが高級仕立て服店の支配人としてローマからトリノに来ている。ホテルの隣の部屋で、若い女性ロゼッタが自殺未遂を計ったのが縁で、トリノの社交界の女性達と親交を結ぶ。誰もが孤独を抱えながら、見せかけの友情で一見平和な交際が続く。しかし、ロゼッタが社交仲間の妻のある男に愛を告白したことを知るや、女性達はそれをゲームのようにあおる。
優柔不断な男は若いロゼッタとの愛を全うできずに、彼女は2度目の自殺で今度こそ死んでしまう。クレリアはロゼッタを店に雇って、人生を立ち直らせようとしていた。開店したばかりの高級仕立て服店内の顧客の前をモデルたちが行き交う虚飾の世界で、クレリアは、ロゼッタを殺したのはあなただと、社交仲間の女ともだちをなじる。表面だけの仲良し仲間は、厳しい現実の前にもろい。クレリアはそんな社交仲間とトリノを去り、仕事に生きるためにローマに戻る。
さて、ぼくのこの夏の始まりは、音楽を中心にした社交の始まりだった。そこにネットが絡んで、急速に親密度を増すが、夏の終わりには見事に反動がやってきた。そんなことの直後で、映画『女ともだち』を身じろぎもせずに凝視ししながら見ていた。