第3次世界大戦勃発の数年前、オルリー空港で少年は未来の自分を目撃する。29分、モノクロ静止画像によるSF作品。静止画像は一枚一枚がとても美しく、印象的なナレーションの声と音楽とともに脳裏に焼き付いてしまう。
1962年作品、その年ぼくは高校1年だが、2冊の映画雑誌を定期購読していた。「映画芸術」と「映画評論」だ。その「映画評論」の方に「ラ・ジュテ」のシナリオが載った。そのストーリーがどんな映画よりもぼくの心を捉えた。数枚の写真とともにぼくはイマジネーションを膨らませるだけで、見る機会に出会うことはなかった。地方都市では「ラ・ジュテ」に限らず、読んだシナリオが上映されないことは珍しいことではなかった。
それから44年後の2006年、「ラ・ジュテ」の記憶は消えていないが、とうに意識から外れていた。あるフランス映画を探して、大きなレンタルショップを徘徊していたら、そこに「ラ・ジュテ」があった。