マリオン・ブラウンの「AFTERNOON OF A GEORGIA FAUN」

これは1970年の録音。昨日の65年のESP盤「MARION BROWN」とはずいぶんと違う。EPSの方はフリージャズといいながら、仕事中でも聞けるけど、こちらはそうはいかない。カミさんが買い物に出かけたので、そのすきにボリュームを上げて「AFTERNOON OF A GEORGIA FAUN」のサウンドに浸りきった。部屋に一人で、同じように浸っても、アート・アンサンブル・オブ・シカゴだったら、複雑に絡み合いながらもメロディとリズムがあるので、立って体を揺すったりしながら没入するけど、こればかりはリズムもメロディもないので、ひたすら座って、サウンドに浸るしかない。浸れないときは聞くのをやめる。今日はきっちりと浸って長い2曲だが全部を聞いた。

ぼくの記憶に間違いがなければ、レコードで出たときはジャケットデザインがCDとは違う。CDのデザインはECMっぽいと言ってしまえばそれまでだが、タイポグラフィだけの洗練されたもので、無機質なサウンドと合っている。レコードの時はどうだったかというと、黒字に白い円とか線が配置された、牧歌的な雰囲気を漂わせた優しいデザインでサウンドとは乖離していたように思う。その乖離が面白いと言えば、面白かった。ぼくは、家のステレオの音量では満足できず、梅田辺りのジャズ喫茶で何度かリクエストしたものだ。たいてい、嫌な顔をされた。もし、これを日に2度聞くとしたら気の毒なことをしたものだと思う。そのぐらいに音は無機質で聞くことを拒否しているかのようだった。

それを11人のミュージシャンで演奏している。ミュージシャンたちはスリリングな緊張を楽しんでいるのではないだろうか。フリージャズって、もともと聞かれることを想定していないのではないかと思う時がある。60年代後期、日本のフリージャズを何度か聞いた。客は2、3人というのが珍しくなかった。でも、ミュージシャンの演奏は熱かった。聴衆のためにではなくて、自分のために演奏していたからに違いない。そういう演奏にはこちらもぎりぎりの緊張で相対したものだ。

ビバップはビッグバンドの仕事を終えたミュージシャンが三々五々集まった深夜のジャムセッションから生まれたと認識しているけど、それだって、自分たちのための演奏であって、聴衆を意識していなかったと思う。フリージャズも同じじゃないかと思う。それにしても、この「AFTERNOON OF A GEORGIA FAUN」は・・・。多分、マリオン・ブラウンがリーダーといいながらもアンソニー・ブラックストンの方向性が大きいに違いない。

「AFTERNOON OF A GEORGIA FAUN」はめったに聞かないけど、ぼくはノイズミュージックも案外好きなので、はずせない音楽。今日の感想は、ヴォイスがないほうが、無機質度が増して良いのではないかと思った。でも、当時この演奏にヴォイスなしは考えられないだろうな。そういう意味で時代の空気を感じてしまう。

Marion Brown alto saxophone, zomari, percussion
Anthony Braxton alto and soprano saxophones, clarinet, contrabass clarinet, chinese musette, flute, percussion
Bennie Maupin tenor saxophone, alto flute, bass clarinet, acorn, bells, wooden flute, percussion
Chick Corea piano, bells, gong, percussion
Andrew Cyrille percussion
Jeanne Lee voice, percussion
Jack Gregg bass, percussion
Gayle Palmore voice, piano, percussion
William Green top o’lin, percussion
Billy Malone african drum
Larry Curtis percussion

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カテゴリー: Music