ジョン・バーニンガムの動物たちがリズミカルに展開する絵本/Where’s Julius?

ジョン・バーニングムの絵本には、とくにストーリーらいしストーリーがなくて、リズミカルにシーンが展開するものがあるけど、本書はそんな種類の一冊。父さんと母さんと男の子の3人家族なんだけど、この息子、とっても忙しい子。食事の時はたいていにない、で、母さんか父さんが「Where’s Julius?」と言う。で、Julius はどこそこよ、と言って、トレイにのせた食事を息子に届ける。これが延々と繰り返される絵本。

バーニンガムの描く動物って、どうしてこんなに愛嬌があるんだろう。本書でも常連のネコをはじめ、ヘガタカ、ラクダ、オオカミなんかが登場するけど、そんな動物をじっと見ているだけなんだけど、飽きない。

幼い少女の見る夜の風景をアン・グットマンとゲオルグ・ハレンスレーベンが描いた絵本/夜になると

街に明かりがともり、夜が始まるたそがれどきは昼の世界からアナザワールドへ踏み出すとき。すっかりと忘れていた幼い時の、たそがれどきの不安と期待を甦らせてくれる不思議な絵本。と言って、妖精やおばけが出てくるわけではない。ごく、日常が描かれるだけ。アン・グットマンとゲオルグ・ハレンスレーベンのコンビは有名な「リサとガスパール」シリーズの作者だ。ゲオルグ・ハレンスレーベンが絵を担当した「And If the Moon Could Talk」もまた、幼い少女が眠りに付くまでの幸せなひとときを描いたものだった。しかし、本書の少女はこの夜、一人で眠りにつく。

筆のタッチは以前の作品よりも大胆になっている。当然、細部は描ききれないが、その分、見る物の想像する領域が膨らむ。街の風景、部屋の情景が何げないようで、構図が練られているので、臨場感を強く受ける。そう、まるで、映画のワンシーンに入り込んだような、クラクラっとする錯覚を感じさせてくれる、とてもよくできた絵本だ。

夜になると
作 アン・グットマン&ゲオルグ・ハレンスレーベン
訳 今江祥智
発行 2005年12月1日 BL出版
QUAND VIENT LA NUIT
by Anne Gutman & Georg Hallensleben
copyright (c) 2004, Socie´te´ nouvelle Adam Biro

アフリカへ誘うゲオルグ・ハレンスレーベンの絵本/BABOON

とても緑が美しい絵本。それはアフリカの森と草原。ヒヒの子どもが母親の背中で目覚める。今日は、子どもが森と草原の世界と出会う初めての旅。まず、最初は親子の行く手をゆっくりと横切って行くカメ。ワニやゾウそしてサイに出会う。草原で戯れる親子。日が落ちて、星が輝き、子どもは母の背でまどろむ。「リサとガスパール」シリーズのアン・グッドマンとゲオルグ・ハレンスレーベンのこれも夫婦で共作の絵本。郷愁に誘われるかのような美しい緑の、アフリカの風景が描かれる。

BABOON
kate Banks
Pictures by Georg Hallensleben
Originally published in French under the title Baboon,
copyright (c) 1994 by Editions Gallimard
First American edition, 1997

ウィリアム・スタイグの夫婦愛の絵本/Caleb & Kate

表紙の絵だが、おかみさんが飼いイヌと遊んでいる。実はこのイヌ、魔法使いの軽い気まぐれからイヌにされてしまった亭主なのだ。亭主はそのことをカミさんに伝えたくてもできない。カミさんは可哀想な迷いイヌだと思って飼っているのだ。なんともおもしろい話だ。スタイグのほかの本と同じで、ひょんなことから魔法が解けてハッピーエンドだが、わたしはここでも感心するのは飼いネコの描かれ方だ。まだ人間だったときの夫婦ケンカの横にたたずむネコ、家を出ていく亭主を見送るネコ、イヌになって帰ってきた亭主をいぶかしげに見つめるネコ。あくまで脇役だから、じゃまにならないようにさりげなく描かれているのだが、これがまた絶妙なんだ。

Caleb & Kate
by William Steig
Copyright (c) 1977 by William Steig

ウィリアム・スタイグの変身する絵本/Solomon the Rusty Nail

平凡な子ウサギ、ソロモンがある日、釘に変身する術を知ってしまう。この変身術を使って家族を驚かせては楽しんでいたが、夏休みのある日、ネコに捕まってしまう。釘に変身することで危機を脱するが、逃げ出せない日々が続く。ウサギもネコも服を着ていて、まるで人間なのだが、ネコの夫婦から見ると、ソロモンはまるまると太ったうまそうなウサギの子にしか見えないところがおもしろい。変身したまま、家族から離れ、最後は家族と無事に再開と、スタイグお得のパターンだ。

スタイグの絵は一見、雑でノホホンとしているようだが、細部にこだわりがあり、独特な味わいのある絵本になっている。本書での目のつけどころは、登場人物(動物?)の目つきだ。ストーリーは劇的だが、話が淡々と進むので、ど派手なシーンはない。その代わり、目つきなど、小さな表現のちょっとした違いに気づき、ニンマリとしてしまう。

日本語版は「くぎになったソロモン」1989年セーラー出版発行

Solomon the Rusty Nail
by William Steig

ウィリアム・スタイグの文句なしに面白い絵本/Farmer Palmer’s Wagon Ride

こんなけったいなストーリーの絵本も珍しい。スタイグの絵本は特異な存在で、わたしは凄く好きだ。なかでも本書はアホらしさ加減がスタイグのなかでも白眉で非常に好きだ。お百姓のパーマーさんはブタ。ロバのエベネザーさんは雇われて荷車をひいている。早朝、二人は収穫した野菜を荷車に満載して町に売りに行く。売ったお金でパーマーさんは奥さんと子どもたちにお土産を買って帰途につく。途中、いろいろあって笑わせる。といってもそんなにたいそうな事があるわけではない。そこを笑わせるのがウィリアム・スタイグの腕なんだ。

スタイグの絵本の背後にあるのは家族愛だけ。あとは笑いを誘うポジティブな視点。これだけだと、薄っぺらな内容の絵本にしかならないと思うが、一旦、スタイグワールドに引き込まれると絵のすみっこに描かれている、なんでもない物にも笑ってしまう。とても不思議な作家だ。

日本語版は「ばしゃでおつかいに」のタイトルで、評論社(1976初版)から出ている。せたていじの翻訳もスタイグの世界にとっぷりと浸かっている感じで、とても暖かい。

Farmer Palmer’s Wagon Ride
Copyright (c) 1974 by William Steig

《ウィリアム・スタイグの絵本》
ウィリアム・スタイグらしいおかしな絵本/Pete’s A Pizza
ウィリアム・スタイグの夫婦愛の絵本/Caleb & Kate
ウィリアム・スタイグの変身する絵本/Solomon the Rusty Nail
ウィリアム・スタイグ(William Steig)/ロバのシルベスターとまほうのこいし

バーニンガムによる犬が主人公のちょっと寂しくなる絵本/Courtney

ジョン・バーニンガムの絵本って、いったい何冊出ているんだろう。知っているだけでも、すごい数だ。その絵本にはどれも、愛くるしい子どもや動物たちでいっぱいだ。それらがとても多くの人々に愛されている。ぼくもその一人だ。ぼくは、バーニンガムの絵本の中に愛くるしい絵とはうらはらに、寂しさの存在を垣間見ては、その落差に刺激を覚えている。バーニンガムの絵には後ろ姿が多い。実際の後ろ姿じゃない。バーニンガムが遠ざかる動物たちを見送る寂しさのまなざし、という意味の後ろ姿。

そういう意味で本書はバーニンガムの寂しさ度がけっこう高い絵本だ。子どもたちが野犬収容所から一匹の引き取り手の見つからない老犬を連れてくる。その犬が Courtney だ。両親は、どうして、もっと若くて可愛い犬にしなかったのかと、子どもたちを責める。しかし、Courtney、先日読んだおならばかりしている犬と大違いで、料理はするは、給仕はするはで父さんも母さんも大助かりだが・・・。

COURTNEY by John Burningham
(c) John Burningham 1994

Angela Barrett の美しい絵本/Snow White

幻想的で耽美な世界・・・絵本「白雪姫」は本当に美しい。細部まで丁寧に描かれた情景がイマジネーションを広げてくれて、一気に物語の世界に入り込んで行く。七人の小人たちの住む深い森の描写の見事なことといったら他に例がない。幼い頃にディズニーのアニメーション映画で白雪姫を見てしまったおかげで、ある特定のイメージが心に定着してしまった。幼い頃から抱いていたそんなイメージを覆すチカラが本書にはあると思う。

《アンジェラ・バレットの絵本 ほか》
キッチンの窓から / アンジェラ・バレットの絵のあるイギリスのクッキングブック
スノーグース / アンジェラ・バレットの素晴らしい絵
アンジェラ・バレットの素晴らしい絵「氷の宮殿」
アンジェラ・バレット絵の絵本 / 絵本 アンネ・フランク
Angela Barrett の美しい絵本/Snow White

Dyan Sheldon と Gary Blythe の絵本/The Garden

少女は庭で土に埋もれていた不思議な形をした石を見つける。それがインディアンの矢じりであることを母に教えられた少女は、その日、月が上っても庭にいた。母に庭の中にテントを張ることを許され、その夜、少女はインディアンの若者に矢じりを返す・・・。とても美しい絵が、イマジネーションを膨らませてくれる絵本。

ロバート・マックロスキーの絵本「Time of Wonder」でも、少女たちがインディアンの貝塚を見つけるシーンがあった。どちらも、遠い時を隔てて、先住民族の若者と同じ場所に立った感慨を描いている。

The Garden
Story by Dyan Sheldon
Illustrations by Gary Blythe
First published in 1993

《著者の他の絵本》
優しくなれる絵本 The Whales’ Song

無茶苦茶におもろい・・・絶対に笑える絵本 Walter the Farting Dog

四六時中、おならをする犬の話だが、ちょっと他にないぐらいに笑える絵本だ。兄妹が迷い犬の収容所から引き取り手のいない犬を連れてくる。この話はバーニンガムの「コートニー」と同じだ。バーニンガムの方は家事の得意な犬だったが、こっちはおならをするだけの犬だ。バスで洗い、獣医に見せ、えさもいろいろと試すが効き目はない。ついにお父さんは返してこいと言う。最後の夜、なんと家に侵入したドロボーをおならで撃退してしまい、めでたく家族の一員になるというお話だ。

笑えるのはストーリーだけではなく、絵がなんとも人をくっている。このユーモア感覚がたまらない。両親、兄妹のほかにネコも重要な家族の一員だ。このネコの仕草が笑いを誘う。もちろん、おならをするわけでなく、ましてやしゃべるわけでもない。ただ、いるだけなのに、笑える。これはすごい。ほかに家族とはいえないが、一匹のクモも必ず絵のどこかにいて勝手に家族のように振る舞っている。このクモの存在も本書には欠かせない。ほかには、壁紙の柄とか、兄妹の寝具のカバ-なんかも笑える。そうそう、家族がはいてる動物スリッパはほんとうにバカみたいで笑える。でもドロボーを撃退したあとの最後のオチはやっぱり、一番笑える。

Walter the Farting Dog
Copyright (c) 2001 by William Kotzwinkle and Glenn Murray
Illustrations (c) 2001 by Audrey Colman